4大出版社の定義と位置づけ

日本の出版業界において、4大出版社と呼ばれるのは講談社、KADOKAWA、集英社、小学館の4社です。

これらの企業は売上高や市場シェアで業界をけん引する存在となっています。紀伊國屋書店が発表した2023年の出版社別売上ランキングでは、1位が講談社、2位がKADOKAWA、3位が集英社、4位が小学館と、上位4社をこの4社が占めました。

4社はそれぞれ異なる強みを持ち、出版業界全体の発展に貢献してきた歴史があります。

出版業界における役割

4大出版社は、書籍や雑誌の企画・編集・販売だけでなく、映像化やキャラクタービジネスなど、多角的な事業を展開しています。

出版物を通じて文化を育て、社会に影響を与える作品を生み出す役割を担ってきました。近年では電子書籍市場の成長に対応し、デジタルコンテンツの制作や配信にも力を入れています。

また、新人作家の発掘や育成、各種文学賞の運営を通じて、日本の文化発展に寄与する存在です。

講談社の特徴と歴史

創業110年を超える老舗出版社

講談社は1909年に創業者の野間清治によって「大日本雄弁会」として創業されました。

当初は弁論雑誌『雄辯』を出版していましたが、1911年に『講談倶楽部』を創刊したことから「講談社」の名称が使われるようになりました。現在は創業から110年以上の歴史を持つ老舗出版社として、日本の出版業界を代表する企業です。

本社は東京都文京区音羽にあり、「音羽グループ」の中核企業として知られています。

主力出版物と事業展開

週刊少年マガジンと人気漫画

講談社は『週刊少年マガジン』や『モーニング』などのコミック誌を発行し、多くの人気作品を生み出してきました。

漫画だけでなく、『週刊現代』『FRIDAY』『ViVi』などの雑誌、『群像』などの文芸誌まで、30を超える雑誌を展開しています。幅広いジャンルをカバーする総合出版社として、多様な読者層にコンテンツを提供しています。

文芸書と賞の運営

講談社は江戸川乱歩賞、吉川英治賞、野間文芸賞など、歴史のある文学賞を主催しています。

江戸川乱歩賞は推理作家の登竜門として権威を誇り、数々の人気作家を輩出してきました。これらの賞を通じて、出版文化を担う優れた才能を顕彰し、日本の文芸の質的向上に貢献しています。

売上高と市場シェア

講談社の2023年度の売上高は1720億円となっています。

紀伊國屋書店の2023年出版社別売上ランキングでは、前年比0.9%増で1位を獲得しました。『ブルーバックス』シリーズなど、自然科学や科学技術を一般読者向けに解説する新書も好評を得ています。

同社は「おもしろくて、ためになる」という理念のもと、質の高いコンテンツを世界に届ける活動を続けています。

KADOKAWAの特徴と歴史

総合エンターテインメント企業

KADOKAWAは1945年に国文学者の角川源義が角川書店を創業したことに始まります。

現在の株式会社KADOKAWAは2014年10月に設立された法人で、出版だけでなく映像、ゲーム、Webサービス、教育など幅広い事業を展開する総合エンターテインメント企業です。資本金は656億円となっています。

経営理念は「不易流行」で、新しさを追求しながら変わらない本質を大切にする姿勢を示しています。

主力出版物と事業展開

ライトノベルと若者向けコンテンツ

KADOKAWAは年間7000タイトルを超える新作を発行し、文芸、ライトノベル、児童書など幅広いジャンルのコンテンツを創出しています。

特にライトノベル分野では強い存在感を持ち、若者向けの作品を数多く手がけています。総合電子書籍ストア「BOOK☆WALKER」を運営し、電子プラットフォームの展開にも積極的です。

メディアミックス戦略

KADOKAWAはドワンゴとの経営統合により、「ニコニコ動画」を活用したクロスメディア展開を強化しました。

書籍の映像化、ゲーム化、グッズ展開など、一つのコンテンツを多角的に展開するメディアミックス戦略が特徴です。海外展開にも力を入れ、人気シリーズの翻訳出版や現地オリジナル作品の開発を進めています。

売上高と市場シェア

紀伊國屋書店の2023年出版社別売上ランキングでは、KADOKAWAは前年比1.0%増で2位となりました。

出版事業のほか、映像事業やゲーム事業も含めた総合的な事業展開により、エンターテインメント業界全体で強い影響力を持っています。本社は東京都千代田区富士見に位置しています。

集英社の特徴と歴史

漫画に強みを持つ出版社

集英社は1926年に小学館の娯楽誌出版部門として創業されました。

社名は「英知が集う」という意味を持ち、趣味と娯楽性に重きを置く出版社としてスタートした歴史があります。1952年に独立した社屋に移転し、小学館との業務分離を行いながら、独自の発展を遂げてきました。

現在も小学館が筆頭株主となっており、「一ツ橋グループ」を形成しています。

主力出版物と事業展開

週刊少年ジャンプと人気作品

集英社の最大の強みは漫画部門にあり、特に『週刊少年ジャンプ』は日本を代表する少年漫画雑誌です。

2024年4月から6月の少年向けコミック誌印刷証明付き発行部数では、『週刊少年ジャンプ』が約109万部を記録し、2位の『週刊少年マガジン』と3倍以上の差をつけて1位を獲得しました。『ONE PIECE』をはじめとする数々のメガヒット作品を生み出しています。

デジタル展開にも積極的で、「少年ジャンプ+」や「ゼブラック」などのアプリを通じて、スマートフォンでの漫画配信を展開しています。

雑誌事業の多様性

集英社は漫画だけでなく、女性誌、男性誌、芸能誌、文芸誌など、趣味・娯楽に関する雑誌を幅広く展開しています。

『non-no』『Seventeen』などのファッション誌、『週刊プレイボーイ』などの総合誌、『Myojo』などの芸能誌、文芸誌『すばる』など、多彩なラインナップを持っています。社是である「創意・自信・協調」のもと、魅力的なコンテンツを作り続けています。

売上高と市場シェア

紀伊國屋書店の2023年出版社別売上ランキングでは、集英社は前年比7.9%減で3位となりました。

本社は東京都千代田区一ツ橋に位置し、小学館と同じエリアにあることから「一ツ橋」の名称がグループ名の由来となっています。2026年には創業100周年を迎える予定です。

小学館の特徴と歴史

児童書から始まった総合出版社

小学館は1922年8月8日に相賀武夫によって創業されました。

日本で初めての学年別学習雑誌を創案したことで知られ、児童向け教育出版から事業をスタートさせた歴史があります。2022年に創業100周年を迎え、長年にわたり日本の出版文化を支えてきました。

資本金は1億4700万円、従業員数は698名となっています。

主力出版物と事業展開

児童向け書籍と図鑑

小学館は創業の経緯から、現在でも児童向け書籍や図鑑に強みを持っています。

『小学一年生』などの学年別学習誌、『めばえ』などの幼児誌を発行し、子どもたちの成長を支える出版物を数多く手がけています。図鑑や辞典、百科事典などの分野でも信頼と伝統を積み重ね、教育分野における確固たる地位を築いてきました。

幅広いジャンルの雑誌展開

小学館は児童書だけでなく、『少年サンデー』『ちゃお』などのコミック誌、『CanCam』などのファッション誌、『週刊ポスト』『女性セブン』などの週刊誌と、幅広いジャンルの雑誌を展開しています。

書籍部門でも絵本、文芸書、実用書、電子書籍など多様な出版物を発行し、子どもから大人まで幅広い年代に向けたコンテンツを提供する総合出版社です。

売上高と市場シェア

小学館の2023年2月期の売上高は1084億7100万円となっています。

紀伊國屋書店の2023年出版社別売上ランキングでは、前年比1.3%増で4位を獲得しました。集英社とともに「一ツ橋グループ」を形成し、日本の出版業界における二大勢力の一角を担っています。

4大出版社の業績比較

売上高ランキング

紀伊國屋書店が発表した2023年の出版社別売上ランキングによると、1位は講談社で売上高は約3054億円、2位はKADOKAWAで約2804億円、3位は集英社で約2541億円、4位は小学館で約2019億円となりました。

講談社とKADOKAWAが前年比プラス成長を維持した一方、集英社は前年比7.9%減となりました。各社とも電子書籍市場の成長に対応しながら、新たなビジネスモデルの構築を進めています。

各社の強みと特色の違い

4社はそれぞれ異なる強みを持っています。

講談社は創業110年以上の歴史と幅広いジャンルをカバーする総合力が特徴です。KADOKAWAは出版にとどまらない総合エンターテインメント企業として、メディアミックス戦略を展開しています。

集英社は『週刊少年ジャンプ』を中心とした漫画部門の圧倒的な強さが際立ち、集英社は児童書や図鑑分野での伝統と信頼を土台に、総合出版社として多様な事業を展開しています。

4社はそれぞれの特色を生かしながら、日本の出版業界の発展をけん引する存在として、今後も重要な役割を果たしていくでしょう。


参考URL:

https://book-link.jp/media/archives/11531 (紀伊國屋書店2023年出版社別売上ランキング)

https://www.kodansha.co.jp/about.html (講談社公式サイト 会社情報)

https://group.kadokawa.co.jp/company/outline.html (KADOKAWAグループ公式サイト 会社概要)

https://www.shueisha.co.jp/company/ (集英社公式サイト 企業情報)

https://jinji.shogakukan.co.jp/company/ (小学館求人サイト 会社概要)

https://www.onecareer.jp/articles/1150 (ワンキャリア 4大出版社比較記事)